写生はとても大切です。
絵を描くためにはまず写生しなければなりません。
その大切さについてはいずれ別のコラムで話しますが、とりあえずは画材が必要になりますね。
表題にある「七つ」ではとても足りないのですが、
私がいつも使っている画材を、コラム2回に分けて順番に紹介してゆきます。
1、スケッチブック
大きさは0号〜10号まで各種サイズが市販されています。
大きなもののほうが描きやすいとはいうものの重くなりますから、
屋外で持ち歩いて写生するなら主に6号〜8号、
旅行に行くならそれ以下のサイズを持ってゆくというように使い分けています。
小さいサイズのスケッチブックだからといって対象を無理に縮めて描かずとも
見開きで左右を使ったり、足りなければ紙を継ぎ足して描くので大丈夫です。
描きたいものにいつ出会うかわからないので、0号のものは常に持ち歩いています。
紙質も廉価なものから高級な水彩紙が綴じられているもの、
あるいはパステル用に数種類の色の紙がセットになっているものなどさまざまあるのですが、
ごく一般的に販売されているスケッチブックでも製品によって用紙のざらつき具合が違うので、
まずは廉価なものを試してみて、好みによって選びなおしてゆくのも良いかもしれません。
私は当然スケッチブックも使いますが、それとは別に画材専門店で見本の中から用紙を選び、
自分の使うサイズにカットしてもらって「カルトン」という画板のようなものに留めて描くことがあります。
スケッチブックでは足りない大きさで写生することが多いのと、
自分の好みの紙質を選ぶことができること、必要な枚数だけ持ち歩けばよいことなどが理由です。
2、鉛筆・練りゴムなど
鉛筆はさまざまなメーカーから発売されていますが、
一般的には価格の高いもののほうが適度に滑らかに描けるような気がします。
美大受験のように鉛筆だけを使ってデッサンするわけではないですから、
硬さは2H〜4Bくらいの中から何種類か用意すれば事足ります。
描き手の筆圧や用紙、気温によって描き味がかわりますので、どの硬さを使うと良いのかは一概には言えませんが、
私はBか2Bあたりを常用し、必要に応じて硬さを変えながら描いています。
良く使う硬さの鉛筆は複数本用意しておくと、写生の途中で削り直す手間が省けます。
また、鉛筆は必ずナイフで削り、鉛筆削りで削った場合よりも芯を長く出しておくのが流儀です(笑)
そうすることで表現の幅が広がりますし、削る手間も少し省けます。
とはいえ実際は、私は芯を削って尖らせることはほとんどありません。
写生で自分が求めている表現は細い線でなく、ものの形をしっかりとらえることのできる太めの線だからです。
私は写真中央あたりに写っているシャープペンシルをよく使うのですが、
これは普通の鉛筆と同じ直径2ミリの芯を使える特殊なものなので芯をナイフで削ることもでき、
鉛筆と同様の使用感があります。
鉛筆と違って木部を削る手間が省けることが良いのですが、
ほんとうは、長時間描くには普通の鉛筆のほうが軽くて疲れません。
その下に写っているグレーの棒は「擦筆(さっぴつ)」といって、
鉛筆で描いた部分をこすって柔らかい調子を出すものです。
面倒なので私は使いません。指でこすっても同じことです。
その下、カッターナイフの上に置いてある銀色のものは「ペンシルホルダー」です。
鉛筆が短くなって使いにくくなったときに、これにセットして持ちやすくするものです。
画像右側に置いてある白いものとグレーのものは「練りゴム」です。
間違えた個所を全面的に消すのであれば普通の消しゴムが良いのですが、
部分的に直したい場合や色鉛筆で塗った色を少し薄くしたい場合など、練りゴムを使うと具合が良いです。
また、練りゴムの先を尖らせれば細かく消す表現もでき、これは消すだけでなく描く道具でもあるのです。
もともと白いものが、使ってゆくと黒く汚れるので練り込んでゆくと画像のようにグレーになってゆきます。
全体が真っ黒になるまで使うことができます。
3、色鉛筆
彩色するために必要なのはまず色鉛筆です。それも通常の油性色鉛筆。
なぜなら水彩絵の具やパステルでは細部のデリケートな表現ができませんし、
さらに色鉛筆なら乾かす間もなくどんどん描けるからです。
とはいえ色鉛筆ではどうしても再現できない色があるため、
色をつけた上からさらに水彩絵の具で塗り足すこともあるので
油性色鉛筆でないと具合が悪いのです。水彩色鉛筆だと溶け出してしまいますからね。
私が主として使っているのはファーバーカステル社の油性色鉛筆です。
持ち運びのために木箱入り100色セットを買ったのですが、
セットのうち半分くらいは他社の製品に入れ替えています。
ファーバーカステル社の専門家用色鉛筆は発色が美しくて良いのですが、
海外の製品にありがちな、緑色が派手すぎる傾向があります。
ですから微妙な中間色は他社製品から選び出して1本ずつ入れ替えたり、
特に国産のホルベイン社の製品は、日本人の感覚に馴染む緑色が多くラインナップされているので、
長年使用する中でそういった選択から自分にとってのベストセットを揃えて来たのです。
そんなわけで、日本画教室を受講されている方に
「何色セットを買ったらよいのでしょうか」と聞かれた時は
多ければ多いほど良いですが、セットを買っただけで安心というわけではありませんよ。
と説明しています。
画材を買うのは楽しいものですから、あとでまた1本ずつ買い足してゆくことも喜びのひとつと思っています。
さて、前述したように描きたいと思うきっかけはいつ訪れるかわかりませんから、
小さいスケッチブックと共に色鉛筆を常に持ち歩くように心がけているのですが、
重くかさばる木箱のセットをいつも持ち歩くことはできません。
フルセットとは別に抜粋したオリジナルの30数色を、布製の巻きケースに入れて用意してあります。
次回の後編では残りの画材について。