「ミョウバン」の効果

「ミョウバン(明礬)」は古くから日本画の画材として用いられてきた化学物質です。
日本画で使われるものは「キミョウバン(生明礬)」というもので、そこから加熱による脱水処理をしたものが、漬け物などに使われる「焼きミョウバン」なのだそうです。焼きミョウバンは水に溶けにくく、日本画に使われることはありません。

日本画で何のためにミョウバンを使うかといえば、まずは紙のにじみ止めのための「ドウサ(礬水)」を作るためです。適正な濃さの膠液にミョウバンを加え、よく溶かして紙に塗れば、本来墨や絵の具がにじんでしまう和紙がにじまなくなります。

それから、銀箔の変色を防いだり、金属箔の上から描画しやすくするために箔の上にドウサを引くことも一般的におこなわれます。
裏技的な使い方では、絵の具を塗り重ねてゆくときに下の絵の具を動かさないようにするために、ミョウバンを加えたごく薄い膠液を画面に塗っておくこともあります。

刷毛塗り
塗り重ねるときに下の絵の具が動くことがある


これらの技法は、膠を硬化させるミョウバンの性質によるもので、試しに濃い膠にミョウバンを多く混ぜ合わせると、あっという間に膠がゼリー状になることからもわかります。

画材店で売っているミョウバンは画像のように結晶状になっていることがありますから、溶けやすいように細かく擂りおろしておくとよいでしょう。

ミョウバン
ミョウバンの結晶を拡大して見たもの