岩絵の具の魅力 その1

〜発色の美しさ〜

天然岩絵の具と新岩絵の具

前回のコラムで岩絵の具のことに触れましたので、もう少し詳しくお話しましょう。
岩石を砕いたものが日本画用の絵の具になるわけですが、天然の岩石から製造される天然岩絵の具と、
人工的に作り出された岩石から製造される新岩絵の具があります。

天然岩絵の具で有名なものは「群青」で、宝飾品にも使用される貴重なアズライト(藍銅鉱)を原料としているため
最も高価な岩絵の具のひとつです。
マラカイト(孔雀石)からできる「緑青」という岩絵の具も美しい緑色をしており、
このふたつの絵の具は古来、世界中で絵画や壁画に使われてきたものです。

自然の中の岩石だけでは絵に必要な色すべてが揃うわけではないので、
新岩絵の具が開発される以前は、表現できる色を増やすために別の色を塗り重ねたり、
植物や生き物から取り出した色素を利用したりしていました。
藤黄やコチニールといった絵の具は現代でも使われています。

色数の少なさを補うために、戦後の日本で新岩絵の具が開発されました。
これは七宝焼の技術を生かして製造された色つきの岩石を原料としています。
天然岩絵の具に比べさまざまな色を作ることができるので、日本画の表現が飛躍的に広がりました。

アズライト原石
アズライトの原石 これが天然群青になる

岩絵の具は美しい

一見粉のように見える岩絵の具ですが、顕微鏡で拡大して見ると明らかに粒状であることがわかります。
粒状とはいえ均一な整った形ではなく、さまざまな不定形で大きさにもばらつきがあることから、
光を複雑に反射するため深みのある発色をするのです。

さらに先ほど紹介した「群青」などは、人工的に作られた絵の具と比べると、
いわばダイヤモンドとガラス玉のような違いがあり、
内側から輝きを発しているかのような美しさを見せてくれます。

岩絵の具顕微鏡画像
40倍に拡大した天然群青の粒子

岩絵の具の現在

岩絵の具は取り扱っている販売店が限られているため、一般の皆さんには馴染みがないかと思いますが、
日本画専門店などで美しく陳列されて売られています。
小分けされたものもありますが、たいがいは棚に並べられた大ビンから量り売りしてくれます。
基本的に15グラムを単位として(1両目と呼びます)色によって重量あたりの価格が違います。
200〜300円程度の安いものから、天然群青などは同じ1両目でも5,000円ほどします。

岩絵の具には今回ご紹介した天然岩絵の具と新岩絵の具以外にも、
合成岩絵の具といって水晶末や方解末の粒子の表面に着色をしたものや、
絵の具メーカーが新規に開発したものもありますが、発色や退色に関して不安が残る場合もあるようです。

また、あらかじめチューブに入って売られているものや、固形のものを水でゆるめて使うものは
本来の日本画用岩絵の具とは別物です。

私が岩絵の具を購入している、上野の「喜屋」さんを紹介したサイトがあります。
「MdN Design Interactive」の中の記事をご覧ください。
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行「第三回/喜屋 〜自家製岩絵具編〜」

また、胡粉や岩絵の具の製造メーカーを訪ねた別サイトの記事もご紹介します。
「さんち〜工芸と探訪〜」という、全国の工芸や製造所を紹介しているサイトで、

以下のリンクからご覧いただけます。
「日本画を彩る胡粉と岩絵具。伝統画材の製造現場を訪れる」