〜絵のサイズ〜
絵の大きさを表す単位として、「号」という言葉をご存知でしょうか。
6号 とか、10号 というように使われます。
号数は細かく規格が決まっており、もともとフランスの油彩画の規格だったものを
日本での尺貫法に置き換え、さらにメートル法に換算したのだそうです。
ですからフランスと日本の号数は、換算による誤差分の違いがあります。
そのフランスで号数の単位が使われるようになった由来は
当時の貨幣価値での販売価格からくるものだったそうなので、
画面の寸法や面積と正確に対応する数値ではないのだということです。
したがって、「1号はハガキ1枚の大きさで、10号はその10倍のサイズだ」
という言葉を耳にしますが、それは違うのです。
現在定められている号数規格では1号の大きさは22センチ×16センチですし、
ハガキの大きさは最大でも10.7センチ×15.4センチと決められていますから、倍ほどの違いがありますね。
また、絵画1号の面積を計算すると352平方センチメートルということになり、
10号の面積は2,412平方センチメートルで、これまた10倍ではありません。
なぜそのような話がまことしやかに語られるようになったのかはわかりませんが、
それはともかく「号」という単位は、日本ではそれほど古い歴史があるわけではありません。
古来日本画は掛け軸に仕立てられたり、障壁画として描かれたりしてきました。
その頃の画面サイズは尺貫法により測られていましたから、
たとえば掛け軸ならば尺五(作品の幅が1尺5寸)や尺三(作品の幅が1尺3寸)といった規格が今でもあります。
日本家屋のふすまや引き戸、屏風に描かれる場合も尺貫法での採寸に準じますね。
明治時代に西洋文化が流入し、日本にも油彩画が伝わると、
それらは当然キャンバスの規格である「号数」での寸法で描かれ、額縁におさめて飾られたことでしょう。
日本画もその後第二次大戦を経て表現を大きく変化させ、
それまで薄塗りだった描き方から、絵の具を厚く塗る表現が台頭してきました。
厚く塗られた画面は、掛け軸に仕立てて巻くことができません。絵の具が割れてしまいますから。
薄い和紙に薄く描かれ軸装されていた日本画は、しっかりとしたパネルに貼り込まれた厚い和紙に描かれ、
油彩画と同じように額縁におさめられるようになりました。
そういった事情や、和室から洋室へと移行してきた生活様式の西洋化もあって日本画も軸装から額装へと移行し、
尺貫法でのサイズから額縁におさまる号数表記でのサイズが標準化してきたのだと想像できます。
とはいえ日本画に限らず、絵は規格にとらわれず自由な大きさで描いてよいはずです。
でも私は自分が講師を務めている日本画教室で
「もちろん自由な大きさで描いて構いませんが、そうなると額縁も特注になって割高ですよ」
と、よく言います。
恐れをなした生徒さんは、ちゃんと規格に応じたサイズの絵を描きます。
「号」についてはこちらのコラムにも少し記載があります。