「パネル」って聞いたことがありますか

日本画は和紙に描くのだと以前のコラムで述べました。
和紙は当然紙ですから、絵を描く際に絵の具の水分を含むと伸縮によってたわんでしまい、
描きにくくなってしまいます。
そうならないよう、通常は日本画用紙を木製パネルなどの〝支持体〟に張り込んでから描きます。
木製パネルは絵画の規格寸でカットされたベニヤ板に、裏側を木の桟で補強したものです。

水張りという方法

パネルに用紙を張り込むには「水張り」という方法を用い、
紙が水分によって伸縮することを利用してたわみなくピンと張ります。
やり方はまず、刷毛やスポンジで用紙に水を引き、水分を充分含ませて伸ばします。
次いで用紙の周囲に設けた糊しろで木製パネルなどに貼り付けてから乾かすと
用紙が縮むことで障子に霧を吹いたあとと同じように紙が張りつめるわけです。
ただ、障子紙と違って厚みがある用紙を張り込みますから、あとで霧を吹いてもうまくゆきません。

現在、日本画を描く方々は木製パネルに用紙を張り込んで描くことがほとんどだと思います。
木製パネルはフランスから渡来した絵画の規格寸である「号」で大きさが決まっていますから、
パネルを買ってきて紙を張ればそのまま額縁にはめ込んで飾ることができて便利です。
パネルは多くの画材店で販売していますが、ここで注意しなければならないことは、
「号」で規定されたサイズでなく、AとかBといった紙のサイズ、つまりA3などのパネルや、
あるいはキャビネとか4つ切りといった写真規格のサイズのパネルも市販されているということです。
もちろん自由なサイズに絵を描いて構わないのですが、あとで額縁に入れようと思ったときに
絵画の規格と違うパネルだと額縁を特注しなければならなくなってしまいます。

また同じ号数、例えば10号だとして、その中にも3種類ないし4種類の規格があります。
FとかP、またはMやSといったものがそれで、10号Pは10号Fに対して矩形の短辺が少々短くなります。
つまり細長くなるわけですね。Mは更に細長くなります。
Sという規格はあまり一般的ではありませんが、矩形の短辺が長辺と同じ長さまで伸びて
正方形になったものです。

仮張りというもの

さて、木製パネル以外に使われる支持体として「仮張り」というものがあります。
最近では日本画専門の画材店でもほとんど見かけなくなりましたが、
障子の桟のようなものに和紙を何重にも貼り重ね、最後に柿渋を塗って防水処理したものです。
絵を飾る方法が額装でなく軸装だった時代は、仮張りに用紙を張り込み、描き終わったらはがして
掛け軸に仕立ててもらうことが一般的でした。
仮張りなどの支持体からはがしたペラペラの状態の作品を「まくり」と呼びます。
現在でもプロの日本画家の一部は仮張りを使って描いた作品を「まくり」の状態で額縁屋に渡し、
補強の裏打ちをした上で額装してもらう方法をとっています。
額縁もパネルが入る仕立てでなく、ペラペラの作品を張り込む仕立てになっているのです。

麻紙ボードは便利ですが

市販の画材で便利なもののひとつに「麻紙ボード」というものがあります。
これは厚めのベニヤ板にあらかじめ日本画用紙が張り込まれているもので、
買ってくればすぐに描き始めることができます。
しかし便利な反面ボード自体の厚みが数ミリ程度しかないので
通常の額縁に納める場合は段ボールなどで厚みを増して押さえてやらないとなりません。

額縁についての詳しいお話は次回に。